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コロナウイルス:SARS-CoV-2オミクロン株は抗体による中和をかなり回避する

Nature 602, 7898 doi: 10.1038/s41586-021-04389-z

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株は、2021年11月にボツワナと南アフリカで初めて特定された。以降、この株は多くの国に広がっており、急速に世界的に優勢になると予想される。この系統は、スパイクに約32の変異を持つことを特徴とする。これらの変異は主にN末端ドメインと受容体結合ドメインに位置し、ウイルスの適応度を高め、抗体回避を可能にする可能性がある。今回我々はベルギーにおいて、エジプトから帰国した旅行者から感染性のオミクロンウイルスを分離した。そして、臨床的に承認されている、あるいは開発中の9種類のモノクローナル抗体と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種者またはCOVID-19からの回復者から得た115血清検体中に存在する抗体に対して、この分離株の感受性を調べた。オミクロン株は、調べた全てのモノクローナル抗体による中和に対して、完全または部分的な抵抗性を示した。また、ファイザー社やアストラゼネカ社のワクチン接種完了から5か月後に採取されたワクチン接種者の血清は、ほとんどオミクロン株を抑制しなかった。発症から6か月または12か月後に採取されたCOVID-19回復期患者の血清では、オミクロン株に対する中和活性は低いか、全く見られなかった。ファイザー社ワクチンのブースター(追加免疫)接種や、感染歴のある人へのワクチン接種は、抗オミクロン株中和応答を引き起こしたが、オミクロン株に対する力価は、デルタ株に対する力価と比べて6分の1から23分の1に低下していた。従って、オミクロン株はほとんどの治療用モノクローナル抗体、そしてワクチンによって誘導された抗体を大幅に回避する。しかし、オミクロン株は、ブースタ接種によって作られた抗体によって中和される。

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