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コロナウイルス:広域中和抗体はSARS-CoV-2オミクロン株の抗原シフトにも対応できる

Nature 602, 7898 doi: 10.1038/s41586-021-04386-2

最近出現した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株は、スパイクタンパク質に37か所のアミノ酸置換があり、そのうちの15か所は受容体結合ドメイン(RBD)に存在するため、利用可能なワクチンや抗体療法の有効性について懸念が生じる。今回我々は、オミクロン株のRBDは武漢株(Wuhan-Hu-1)のRBDと比較して、ヒトACE2に結合する親和性が増強していること、また、マウスACE2に結合することを見いだした。回復期患者の血漿やSARS-CoV-2に対するワクチン接種者の血漿における中和活性は、従来株のシュードウイルスと比較してオミクロン株のシュードウイルスに対して顕著に低下していたが、この活性低下は3回目のワクチン接種後はそれほど顕著ではなかった。受容体結合モチーフを標的とするほとんどのモノクローナル抗体は、オミクロン株に対するin vitroでの中和活性を喪失しており、29のモノクローナル抗体のうち、ACE2を模倣するS2K146抗体などの3つだけが有効性を保持していた。さらに、ソトロビマブ、S2X259、S2H97など、サルベコウイルスの多くを中和するモノクローナル抗体の一部は、受容体結合モチーフ以外の抗原部位を認識することでオミクロン株を中和した。オミクロン株による免疫回避の程度は、SARS-CoV-2に大きな抗原シフトがあることを示している。SARS-CoV-2変異株や他のサルベコウイルスの間で保存されているRBDのエピトープを認識する広域中和モノクローナル抗体は、現行のパンデミック(世界的大流行)や今後の人獣共通感染症の異種間伝播を制御するカギとなる可能性がある。

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