がん遺伝学:がんで見られるクラスター形成変異のマッピングによって明らかになったAPOBEC3によるecDNA変異誘発
Nature 602, 7897 doi: 10.1038/s41586-022-04398-6
がんゲノムにはクラスターを形成している体細胞変異がよく見られ、これまでの解析により、クラスターを形成した単一塩基置換は複数タイプが見つかっている。その中には、二塩基置換や多塩基置換、omikliと呼ばれる散在性の高頻度変異、kataegisと呼ばれるもっと長い鎖上での協調した事象が含まれる。今回我々は、30種類のがんから得た2583の全ゲノム塩基配列について詳しく調べ、クラスターを形成している置換や、クラスターを形成している小規模の挿入・欠失(インデル)の特徴を包括的に明らかにした。クラスター形成変異はがんドライバー遺伝子中に非常に高密度で生じていて、遺伝子発現の差異や全生存期間の変化に関連していた。複数の異なる変異過程が、クラスター状のインデルを生じさせるが、その中には喫煙者や相同組換え修復が欠失したがんに多く見られるシグネチャーが含まれていた。二塩基置換を引き起こす変異過程は少なくとも12あったが、多塩基置換の大半は喫煙もしくは紫外線曝露のどちらかによって生じていた。omikli事象は従来、APOBEC3の活性に起因するとされており、クラスター形成置換の大部分がomikli事象によって説明されたが、APOBEC3のパターンにマッチするものはomikliの16.2%だけであった。kataegisは複数の変異過程によって生じていて、全kataegis事象の76.1%は、活性化誘導デアミナーゼ(AID)とデアミナーゼAPOBEC3ファミリーに関連する変異パターンを示した。染色体外DNA(ecDNA)を持つ試料の31%では、APOBEC3 kataegisとkyklonas(ギリシャ語で「サイクロン」の意味)と名付けられたecDNAが同時に生じていることが分かった。変異したecDNAの大半で、複数の異なるkyklonas事象が観察された。ecDNAを含む既知のがん遺伝子では、正の選択とkyklonas事象による高頻度変異が認められた。これらの結果は、ヒトがんに見られるクラスター形成性変異の発生過程が多様であることを示しており、繰り返し変異を引き起こすことでecDNAの進化を促進するAPOBEC3の役割を明らかにしている。

