細胞生物学:グリオブラストーマでの変異はEGFR二量体の構造を変化させてリガンドの偏りを邪魔する
Nature 602, 7897 doi: 10.1038/s41586-021-04393-3
上皮増殖因子受容体(EGFR)はヒトのがんで変異していることが多く、重要な治療標的となっている。EGFR阻害剤は、細胞内チロシンキナーゼドメイン中の変異によりEGFRが活性化される肺がんでは成功しているが、EGFRの変異が細胞外領域にのみ生じる多形性グリオブラストーマ(多形性神経膠芽腫;GBM)では成功していない。今回我々は、よく見られる細胞外GBM変異によって、EGFRがその活性化リガンドの間の違いを識別できなくなることを示す。さまざまな増殖因子リガンドは、それぞれ異なるEGFR二量体を安定化し、安定化されたEGFR二量体は反応速度論的に異なるシグナルを伝達して、結果を特定したり偏向したりする。EGF自体は強力な対称性二量体を誘導し、これは一過的にシグナル伝達を行って増殖を促進する。エピレグリン(EREG)はずっと弱い非対称性二量体を誘導し、これは持続的なシグナル伝達と分化を促進する。GBM変異は、細胞アッセイではEREGとEGFを区別するEGFRの能力を低下させるので、EGFRはEREGなどの低親和性リガンドに応答して、EGF結合時のような強い二量体形成を可能にする。我々はまた、X線結晶学の手法を用いて、R84K GBM変異がEREGによって形成された細胞外二量体を対称性にし、それらを通常はEGFの存在下で見られる二量体と似たものにすることを示す。対照的に、もう1つのGBM変異であるA265Vは、二量体化の際の重要な接触点をリモデリングし、EREGの存在下で見られる非対称的な二量体を強化する。我々の結果は、GBMでのEGFRによるリガンド識別の変化が担う重要な役割を示しており、これは治療標的選択に影響を及ぼす可能性がある。

