進化神経科学:コウモリ類の内耳神経構造の進化および反響定位における意味
Nature 602, 7897 doi: 10.1038/s41586-021-04335-z
コウモリ類の系統ゲノミクスからは、この動物群の反響定位が、Yinpterochiroptera亜目とYangochiroptera亜目で別々に進化したか、あるいはコウモリ類の祖先動物に単一の起源を持ち、それが後にYinpterochiroptera亜目の一部で失われたかのいずれかであることが示唆されている。反響定位行動に用いる聴覚は内耳に依存しており、中でもらせん神経節は極めて重要な構造である。本論文で我々は、Yangochiroptera亜目に属するコウモリ類で、ローゼンタール管に壁のない内耳道に開放された神経節(trans-otic ganglion)という高度に派生したらせん神経節構造を見いだしたことを報告する。この神経解剖学的構造は、より多くのニューロンからなる大型の神経節、より高密度なニューロンの神経支配、蝸牛神経束のより高密度なクラスター化を許容する。これは、Yinpterochiroptera亜目および非翼手目哺乳類の原始形質的な神経構造とは異なっている。今回、こうした神経節の派生的特徴の骨学的相関をコウモリ類の系統発生にたどることができるようになり、それによって、らせん神経節の神経構造に関してYangochiroptera亜目がYinpterochiroptera亜目からどのように分化したかを示す直接的な証拠が得られた。これらの特徴はYangochiroptera亜目の主要なクレード間および種間で大きなばらつきが見られ、形態空間においてはYangochiroptera亜目内での差異はYinpterochiroptera亜目での差異よりもはるかに大きい。このように大きく異なる神経節の特徴は、多様な反響定位戦略のための神経構造的な進化的駆動要因である可能性があり、コウモリ類の大半の科、属、種を含むYangochiroptera亜目の爆発的な多様化と関連付けられる。

