生化学:カルバペネムの生合成におけるB12依存性ラジカルSAM酵素の構造
Nature 602, 7896 doi: 10.1038/s41586-021-04392-4
カルバペネム系抗生物質は、臨床で最終手段として使われ、その有効性と広い抗菌スペクトルのために、抗生物質という兵器の中でも重要な位置を占めている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)において増加した院内感染や人工呼吸器使用に関連する細菌性肺炎の治療のため、その一種であるイミペネムの併用療法使用について、メルク社が米国食品医薬品局(FDA)から承認を受けたことは、カルバペネム系の持つ重要な役割をよく表している。C6のヒドロキシエチル側鎖が、臨床使用されているカルバペネム類と他のβ-ラクタム系抗生物質とを区別する特徴であり、カルバペネムの不活性化に対する感受性が低いのは、この側鎖がβ-ラクタマーゼの活性部位から水を排除することによる。C6ヒドロキシエチル側鎖の構築は、コバラミン(B12)依存性ラジカルS-アデノシルメチオニン(SAM)酵素によって仲介される。こうしたラジカルSAMメチラーゼ(RSMT)が、連続したメチル化反応によってアルキル骨格を組み立てる。従って、臨床使用されているカルバペネム類の治療薬としての有用性の基盤となっているのはこの酵素である。今回我々は、アスパレノマイシンAの生合成過程で3回の連続したメチル化反応を触媒するB12依存性RSMTであるTokKのX線結晶構造を決定した。これらの構造は、酵素の2個の金属補因子を含み、基質のカルバペナムがある状態とない状態の両方で決定された。この種の酵素のほとんどが共有するラジカル機構を使用するB12依存性RSMTの1つの構造が明らかになったことで、最初のC6メチル化反応の立体化学的性質についての知見が得られ、基質のとる位置が各メチル化反応の速度を支配することが示唆された。

