Article
物性物理学:カゴメ超伝導体における時間反転対称性を破る電荷秩序
Nature 602, 7896 doi: 10.1038/s41586-021-04327-z
カゴメ格子は、量子物理学における最もよく知られた構造モチーフであり、固有の非自明な幾何学的形状のおかげで、スピン液体相からトポロジカル物質、絡み合った秩序、そして極めてまれだが非従来型超伝導まで、さまざまな量子相を有することができる。最近、電荷に敏感なプローブによって、カゴメ超伝導体AV3Sb5(A = K、Rb、Cs)が、HaldaneモデルやVarmaモデルにおいて長く探し求められていた量子秩序に類似した非従来型のカイラル電荷秩序を示すことが示唆された。しかし、この電荷秩序の時間反転対称性の破れを示す直接的な証拠はいまだ得られていない。今回我々は、ミューオンスピン緩和を用いて、KV3Sb5におけるカゴメ電荷秩序と超伝導を調べた。我々は、ミューオン集団によって感知される内部磁場の幅が大きく増大することを観測した。この現象は、電荷秩序化温度のすぐ下で生じ、超伝導状態になっても持続した。注目すべきは、電荷秩序化温度以下のミューオンスピン緩和速度が、外部磁場の印加によって大幅に増加することである。さらに我々は、KV3Sb5における超伝導のマルチギャップ性と、Tc/λab−2比(Tcは超伝導転移温度、λabはカゴメ面内への磁気侵入深さ)が、非従来型高温超伝導体と同程度であることを示す。今回の結果は、相関カゴメ格子における、非従来型超伝導体と絡み合った、時間反転対称性を破る電荷秩序の存在を示している。

