コロナウイルス:急性SARS-CoV-2感染における長期生存記憶CD8+ T細胞のシグネチャー
Nature 602, 7895 doi: 10.1038/s41586-021-04280-x
免疫記憶は適応免疫の特徴であり、同一の病原体に再感染した際に、免疫応答の加速と強化を促す。現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)のアウトブレイク(集団発生)以降、主な疑問は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への急性感染時に活性化されたウイルス特異的なT細胞のどれから長期生存記憶T細胞が生じるのか、に注目したものであった。今回我々は、スペクトルフローサイトメトリーとトランスクリプトームとT細胞受容体の塩基配列解読による細胞の索引作成を組み合わせて用いることで、COVID-19患者の個々のSARS-CoV-2特異的CD8+ T細胞の特徴を急性感染から回復期の1年にわたって長期的に調べ、長期生存記憶CD8+ T細胞を識別する明確なシグネチャーを見いだした。急性感染の1年後も生残しているSARS-CoV-2特異的記憶CD8+ T細胞は、CD45RAやIL-7受容体α、TCF1(T cell factor 1)を発現するが、CCR7の発現レベルは低く維持しているため、CD45RA+エフェクター記憶T細胞と類似する。SARS-CoV-2特異的CD8+ T細胞の個別のクローンを追跡することで、インターフェロンシグネチャーが、長期生存細胞を生じるクローンの特徴となっているのに対して、増殖の延長やmTOR(mechanistic target of rapamycin)シグナル伝達が、血液からのクローン消失と関連していることが分かった。まとめると、急性ウイルス感染後の循環血中のヒト長期生存記憶CD8+ T細胞を特徴付ける転写シグネチャーが明らかになった。