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コロナウイルス:既存のポリメラーゼ特異的T細胞が血清陰性のSARS-CoV-2不稔感染で増加する

Nature 601, 7891 doi: 10.1038/s41586-021-04186-8

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に曝露された可能性のある人が、必ずしもPCR陽性や抗体陽性になるわけではない。これは、一部の人ではセロコンバージョン前に不顕性感染が消失する可能性を示唆している。T細胞は、SARS-CoV-2をはじめとするコロナウイルスの感染の迅速な除去に寄与することができる。今回我々は、SARS-CoV-2に対する交差防御能を有する既存の記憶T細胞応答がin vivoで増大し、急速なウイルス抑制を促して不稔感染を誘導するという仮説を立てた。我々は、PCR検査、抗体結合検査、中和抗体検査で繰り返し陰性[血清陰性HCW(SN-HCW)]と判定された、集中的にモニタリングを受けた医療従事者において、SARS-CoV-2反応性T細胞[初期に転写された複製–転写複合体(RTC)に対するものを含む]を測定した。SN-HCWは、パンデミック以前の曝露歴のない人の集団(パンデミック前コホート)と比較して、より強力で多特異的な記憶T細胞を持ち、これらの細胞は、対応付けされた同時的コホートで検出可能な感染後に見られる構造タンパク質が支配的な反応よりも、RTCに対してより頻繁に反応した。最も強力なRTC特異的T細胞を持つSN-HCWでは、SARS-CoV-2のロバストな初期自然免疫シグネチャーであるIFI27が上昇しており、これは不稔感染を示唆する。RTC内のRNAポリメラーゼは、ヒト季節性コロナウイルス(HCoV)やSARS-CoV-2クレードを通じて、高い配列保存性を示す最も大きな領域であった。RNAポリメラーゼは、パンデミック前コホートやSN-HCW由来のT細胞によって(調べた領域の中では)優先的に標的化されていた。SN-HCWでは、HCoV変異株を交差認識するRTCエピトープ特異的なT細胞が見つかった。濃縮されたすでに多く存在するRNAポリメラーゼ特異的T細胞は、顕性のSARS-CoV-2感染と比較して不稔感染だと推定されるSARS-CoV-2感染の後、in vivoで拡大し、記憶応答で優先的に蓄積した。我々のデータは、RTC特異的なT細胞が、エンデミックおよびコロナウイルス科(Coronaviridae)のウイルス科の新興ウイルスに対するワクチンの標的であることを示している。

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