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神経科学:ベクトル計算による他者中心的な進行方向信号の構築

Nature 601, 7891 doi: 10.1038/s41586-021-04067-0

多くの行動課題では数学的ベクトルの操作が必要だが、計算モデル以外では、脳がどのようにベクトル操作を行うかは分かっていない。今回我々は、ショウジョウバエ(Drosophila)の中心複合体(目的地を目指すナビゲーションに関与する脳領域)が、どのようにベクトル演算を行うかを明らかにする。我々はまず、ハエの扇状体において、他者中心的な移動角度(つまり、外部の手掛かりに関連した移動角度)を明確に追跡する神経信号について説明する。過去の研究で、ショウジョウバエと哺乳類では、外部の手掛かりを参照して動物の頭方位を追跡するニューロン(例えば頭方位細胞)が特定されているが、今回の新たな信号は、移動角度と頭方位角度が違うとき(例えば、横歩きする場合)に、空間の感知が適切に更新される仕組みを示している。我々は次に、自己中心的座標から他者中心的座標(つまり、身体中心的座標から外界中心的座標)への変換とベクトル加算を行い、他者中心的な移動方向を計算する神経回路の特性を明らかにする。この回路は、二次元ベクトルを異なるニューロン集団にわたる活動の正弦波状パターンにマッピングすることによって働き、この正弦波の振幅はベクトルの長さを、またその位相はベクトルの角度を表している。この回路の基本的性質は、他の動物の脳や、ナビゲーション以外のベクトル演算や参照フレームの変換が必要とされる脳領域に一般化できる可能性がある。

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