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神経科学:樹状突起スパインの増大がシナプス前終末のエキソサイトーシスに及ぼす機械的効果

Nature 600, 7890 doi: 10.1038/s41586-021-04125-7

シナプス伝達とは、2個のニューロンがシナプス結合部で情報伝達をすることを指し、化学的なものと電気的なものが広範囲に研究されてきた。脳では、興奮性グルタミン酸作動性シナプスは、樹状突起スパインに作られることが多く、スパインは学習時に増大する。樹状突起スパインとシナプス前終末は、シナプス間隙を挟んで強く結合しているため、スパインの増大はシナプス前機能に機械的な影響を及ぼす可能性があった。本論文ではラット海馬のスライス培養標本において、ガラスピペットを用いてシナプス前終末を軽く短時間押すと、グルタミン酸の誘発性放出およびSNARE(soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor)タンパク質群の会合の両方が顕著に促進すること[Förster共鳴移動(FRET)および蛍光寿命画像化により測定]を明らかにする。これらの効果はどちらも20分以上持続した。シナプス前部のFRET信号増大は細胞質ゾルのカルシウム(Ca2+)非依存的で、終末内のSNAREタンパク質群の会合とアクチンの重合に依存していた。意外にも、低濃度のショ糖液(20 mM)による浸透圧負荷は自発性開口放出を起こさないが、誘発放出促進とFRET信号増大を起こすことが分かった。これは高張ショ糖液(300 mM)がそれ自体でエキソサイトーシスを誘発するのと著しく対照的だった。さらに、2光子グルタミン酸アンケイジングで誘発されるスパイン増大も、誘発放出とFRET信号を増大させたが、それはスパインの伸長があって終末を押した場合にだけ起きた。従って、シナプス前終末内には機械受容および変換の機構があり、これによってグルタミン酸の誘発放出が20分以上強化されることが分かった。

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