計算生物学:ディープネットワークハルシネーションによるタンパク質のde novo設計
Nature 600, 7889 doi: 10.1038/s41586-021-04184-w
アミノ酸配列からアミノ酸残基間の距離を予測するのにディープニューラルネットワークを使うタンパク質構造予測は、近年大きく進歩してきている。今回我々は、このようなネットワークによって得られる情報が、モデルの訓練に使われる天然のタンパク質とは無関係のアミノ酸配列を持つ折りたたまれた新しいタンパク質を作り出すのに十分であるかどうかを検証した。まず、ランダムなアミノ酸配列を生成して、これらをtrRosetta構造予測ネットワークに入力し、出発点となる残基間距離マップを予測したが、これは予想通り、何の特色もないものだった。そこで次に、アミノ酸配列空間でモンテカルロ法によるサンプリングを行い、ネットワークによって予測された残基間距離の分布と全てのタンパク質について平均したバックグラウンド分布との間の対比(カルバック・ライブラー情報量)を最適化した。その結果、ランダムに選んださまざまな出発点からの最適化によって、多様な塩基配列と予測構造を持つ多数の新規タンパク質が生成された。我々は、このネットワークによるハルシネーション手法で得た塩基配列のうちの129をコードする合成遺伝子を得て、それらを大腸菌(Escherichia coli)で発現させてタンパク質を精製した。それらのタンパク質のうち27は、ハルシネーション手法で得た構造と一致する円二色性スペクトルを持つ単分散であった。このハルシネーション手法によって得たタンパク質のうち3つの三次元構造を、2つはX線結晶構造解析により、もう1つはNMRによって決定したところ、これらはハルシネーション手法によるモデルと極めてよく一致した。このように、天然タンパク質の構造をアミノ酸配列から予測するよう訓練したディープネットワークは、逆に新たなタンパク質の設計にも使うことができる。そのため、こういったネットワークと手法は、新しい機能を持つタンパク質のde novo設計に、従来の物理学的性質に基づくモデルと共に役立つだろう。

