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免疫学:mRNAワクチン接種後の抗SARS-CoV-2受容体結合ドメイン抗体の進化

Nature 600, 7889 doi: 10.1038/s41586-021-04060-7

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染は、少なくとも1年間にわたって進化し続けるB細胞応答を引き起こす。その間、記憶B細胞は、懸念される変異株で見られる変異に抵抗性を持つ、より広域でより効力の強い抗体を発現する。その結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復期患者に現在利用可能なmRNAワクチンを接種することにより、調べた全ての変異株に対して高レベルの血漿中和活性が生じる。今回我々は、SARS-CoV-2未感染者のコホートにおいて、モデルナ社(mRNA-1273)あるいはファイザー–バイオンテック社(BNT162b2)のmRNAワクチンを接種してから5か月後の記憶B細胞の進化を調べた。初回接種と追加接種の間に、記憶B細胞は中和活性が高まるよう進化する抗体を産生するが、その後、有効性や中和範囲がそれ以上増加することはなかった。そうではなく、未感染者のワクチン接種の5か月後に生じた記憶B細胞は、初期反応で優位を占める抗体に類似した抗体を発現していた。自然感染により経時的に選択された個々の記憶抗体は、ワクチン接種で生じた抗体よりも優れた有効性と中和範囲を持つが、血漿の全体的な中和有効性は、ワクチン接種後の方が高かった。これらの結果は、現在利用可能なmRNAワクチンの接種を受けた人での追加ワクチン接種は、血漿の中和活性を高めるが、回復期患者のワクチン接種で得られる抗体と同等の中和範囲を持つ抗体は産生しない可能性があることを示唆している。

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