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コロナウイルス:COVID-19のヒト遺伝的構造のマッピング

Nature 600, 7889 doi: 10.1038/s41586-021-03767-x

個人の遺伝的背景は、ウイルス感染に対する感受性や応答に関与する。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への曝露の機会や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度には、環境的、臨床的、社会的な要因が役割を担っているが、宿主の遺伝学的背景もまた重要である可能性がある。宿主特異的な遺伝的要因を特定することで、治療に関係する生物学的機構が明らかになる可能性や、SARS-CoV-2の感染や転帰に対する、変更可能な環境リスク要因の因果関係が明確になる可能性がある。我々は、SARS-CoV-2感染とCOVID-19の重症度におけるヒトの遺伝学的性質の役割を調べるために、研究者の全世界的ネットワークを形成した。本論文で我々は、19か国での46の研究に含まれるCOVID-19患者の最大4万9562人からなる3つのゲノムワイド関連メタ解析の結果を報告する。我々は、SARS-CoV-2感染あるいはCOVID-19の重篤な症状とゲノム規模の有意水準で関連する13座位を報告する。これらの座位のいくつかは、肺疾患あるいは自己免疫疾患、炎症性疾患との関連がこれまでに報告されている座位に相当した。また、これらの座位は、感染への応答において治療標的となり得る機構を示している。メンデル無作為化解析から、重症のCOVID-19には、喫煙とボディーマス指数(BMI)が因果的役割を持つことが裏付けられたが、2型糖尿病が因果的役割を持つことを示す証拠は見られなかった。今回の、COVID-19に関連する新規の宿主遺伝的要因の特定は、ヒト遺伝学研究者のコミュニティーが協力して、データ、結果、情報資源、解析の枠組みの共有を優先したことで可能になった。この国際的な共同研究の作業モデルは、新たなパンデミックにおける今後の遺伝学的発見、あるいは実際にいかなる複雑なヒト疾患に対しても、何が可能であるかを明らかにしている。

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