神経科学:領域間皮質投射ニューロンの運命多様性の時間的制御
Nature 599, 7885 doi: 10.1038/s41586-021-04048-3
新皮質の各領域間の相互結合は、感覚の統合と感覚運動変換に不可欠である。これらの機能は、不均一な皮質領域間投射ニューロン(ICPN)、すなわち複数の皮質領域や皮質下標的に向けて軸索の分枝を送るニューロンを介している。ICPNは解剖学的には多様だが、分子的には等質であり、その解剖学的・機能的性質の多様性が発生過程でどのように生じるかはほとんど分かっていない。今回我々は、発生中のマウス新皮質において、単一ニューロンの軸索投射先を特定するためのMAPseq(multiplexed analysis of projections by sequencing)と対応する遺伝子発現を特定するための単一細胞RNA塩基配列解読法を組み合わせて用いて単一ICPNのコネクトームとトランスクリプトームを関連付けることにより、この問題に取り組んだ。一次体性感覚皮質(S1)のニューロンに着目したところ、二次体性感覚皮質に投射する(→S2)ICPNと比較して、運動皮質に投射する(→M)ICPNでは分子的・機能的分化がより長期的に展開することが明らかになった。また、→M ICPNと→S2 ICPNとで時間的に異なって発現する転写因子の1つとして、SOX11が特定された。出生後のマウスで、S1におけるSOX11の発現レベルを操作すると、感覚運動ニューロンの結合が乱され、特定の探索行動に障害が生じた。これらの結果を合わせて、1つの皮質領域内でも、異なるサブタイプのICPNは生後異なる時間経過で分子的な分化が起こり、それがその後の異なる回路結合と機能に反映されることが明らかになった。従って、皮質ニューロンのタイプ内多様性の出現は、発生関連遺伝子プログラム自体の基本的差異ではなく、遺伝子のほぼ同一のセットの発現レベルの動的変化によって説明できる可能性がある。

