構造生物学:細菌の多剤耐性を克服する合成抗生物質クラス
Nature 599, 7885 doi: 10.1038/s41586-021-04045-6
抗生物質耐性菌に有効な新薬の不足は、世界的に公衆衛生上の大きな懸念となってきている。新規抗生物質の探索は、50年以上にわたって天然物の化学修飾(半合成)に大きく依存してきたが、この方法は急速に進化する耐性の脅威と戦うには不十分である。半合成修飾は、多機能性抗生物質に範囲が限定されているのが一般的で、普通は分子量が増大し、基盤となる分子骨格の修飾はほぼできない。適切に設計された完全合成経路ならば、このような欠点に対処することは容易である。今回我々は、剛直なoxepanoproline骨格の構造誘導設計とコンポーネントベースの合成について報告する。この骨格を、クリンダマイシンのaminooctose残基に結合させると、非常に高い効能と活性スペクトルを持つ抗生物質が作り出され、これを我々はiboxamycinと命名した。iboxamycinは、リボソーム大サブユニットを標的とする全ての臨床関連抗生物質(マクロライド系、リンコサミド系、フェニコール系、オキサゾリジノン系、プレウロムチリン系、ストレプトグラミン系)に対する耐性を付与する遺伝子産物であるErmおよびCfrリボソームRNAメチルトランスフェラーゼ酵素を発現する菌株などの、ESKAPE病原菌に対して有効であった。修飾されていない細菌リボソームやErmによるメチル化を受けたリボソームと複合体を形成したiboxamycinのX線結晶学的研究から、抗生物質が結合した際のm62A2058ヌクレオチドの移動など、活性の増強につながる構造的基盤が明らかになった。iboxamycinは、マウスのグラム陽性菌およびグラム陰性菌の感染治療の両方で経口投与可能で安全であり、有効性が見られ、耐性が増加中の時代に新しい抗生物質を提供する化学合成の能力を実証している。

