生化学:DispatchedはNa+フラックスを使って脂質で修飾されたヘッジホッグの放出を引き起こす
Nature 599, 7884 doi: 10.1038/s41586-021-03996-0
タンパク質のDispatchedは、コレステロール輸送体のNPC1とPTCH1や、H+が駆動するRNDファミリーの輸送体と近縁であり、脂質で修飾されたヘッジホッグタンパク質を厳密に決められた胚での発現部位から遊離させることによって、ヘッジホッグの組織パターン形成能を稼働させる。今回我々は、マウスのDispatched homologue 1(DISP1)タンパク質のクライオ電子顕微鏡構造を決定し、膜貫通ドメインを横断するチャネルの内部に3個のNa+イオンが配位していることを明らかにした。また、ヘッジホッグの搬出速度が細胞膜内外のNa+勾配に依存することが分かった。膜内にある3個のアスパラギン酸残基はそれぞれ、3個のNa+イオンのうちの1個に配位して電荷を中和する。これらのアスパラギン酸残基をアスパラギンに置き換えた変異体DISP1-NNNでは、膜貫通チャネルとNa+イオン結合が破壊されている。DISP1-NNN変異体と単一のNa+部位が破壊された変異体では、脂質修飾されたヘッジホッグタンパク質との結合は維持されるが、受容体SCUBE2への脂質修飾ヘッジホッグの搬出は起こらなくなる。ソニックヘッジホッグタンパク質のアミノ末端シグナル伝達ドメイン(ShhN)とDISP1との相互作用は、広い埋没表面領域を介してDISP1の伸びたフリン切断アームと接触することで起こる。変動解析により、ShhNの結合は、DISP1の連続的に変わるコンホメーションのうちの1つの極端なものに限られていることが明らかになった。結合したDISP1と結合していないDISP1のコンホメーションではNa+部位の結合状況が異なっていることから、膜を通過するNa+フラックスが、脂質と結合したヘッジホッグシグナルの膜からの抽出の原動力になっている可能性が示唆される。DISP1中のNa+に配位する残基は、PTCH1や他の後生動物RNDファミリーの輸送体でも保存されており、これらの輸送体のコンホメーション変化によって起こる輸送活動についてもNa+フラックスが原動力になっていると考えられる。

