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がん:正常上皮内の変異型クローンは新たに出現する腫瘍に競り勝ってそれらを排除する
Nature 598, 7881 doi: 10.1038/s41586-021-03965-7
ヒトの上皮組織には加齢に伴ってがんドライバー変異が蓄積するが、腫瘍形成はまれなまま維持される。このような変異の正の選択は、増殖する細胞の挙動と適応度が変異によって変化することを示唆している。従って、成体の正常組織は、空間と生存を巡って競り合う変異クローンがパッチワーク状に存在する状態となり、最も適応度の高いクローンが、競争力の低い近隣の細胞を排除して増殖する。しかし、正常な上皮でのこのような動的競合が早期の腫瘍発生に影響を及ぼす仕組みについては、ほとんど分かっていない。今回我々は、新たに形成された食道腫瘍の大部分は、隣接する正常上皮内の変異クローンとの競合により排除されることを示す。我々は、食道がん発生のマウスモデルで新たに生じた微視的な前悪性腫瘍の運命を追跡し、そのほとんどが速やかに消失して、腫瘍細胞死や増殖低下、抗腫瘍免疫応答などの兆候は見られないことを明らかにした。しかし、10日齢と1年齢の腫瘍の高深度塩基配列解読では、残存する新生物に対する選択の証拠が見られた。トランスジェニックマウスで競合力の高いクローンを誘導すると早期の腫瘍除去が増加するが、クローン競合を薬理学的に阻害すると腫瘍の消失が減少した。これらの結果は、早期の新生物の生存は、それらの競合適応度と周囲の正常組織内の変異クローンの競合適応度との相対的な関係に依存するというモデルを裏付けている。正常上皮内の変異クローンは、細胞競合を介して早期の腫瘍を除去するという予想されていなかった抗腫瘍的役割を持ち、これによって組織の完全性を維持している。

