Article
特集:BICCN:単一細胞のエピゲノミクスにより明らかになったヒト皮質の発生機構
Nature 598, 7879 doi: 10.1038/s41586-021-03209-8
哺乳類の発生の際、クロマチンの状態には細胞の分化に応じた違いがあり、これは遺伝子調節の全体像における変化を反映している。発生中の脳では、細胞のアイデンティティーの決定には細胞運命の指定と位置の同一性が重要であり、これらが神経発達障害に対する選択的脆弱性をもたらす。今回我々は、ヒト前脳由来の一次組織試料でscATAC-seq(single-cell assay for transposase accessibility by sequencing)を使って、発達中のヒト脳での細胞タイプ特異的なクロマチンへの接近可能性パターンを調べた。偏りのない解析を行って、神経発生の間に接近可能性が細胞タイプ特異的また脳領域特異的に大きく変化したゲノム座位を見つけだし、統合的解析を行って細胞タイプ特異的な調節エレメントの候補を予測した。その結果、大脳オルガノイドでは、想定される細胞タイプ特異的なエンハンサー接近可能性パターンの大半が再現されたが、in vivoで見られる細胞タイプ特異的なオープンクロマチン領域の多くが存在しないことが分かった。脳領域間でクロマチンの接近可能性を系統的に比較したところ、大脳皮質の神経前駆細胞に予想外の多様性があることが判明し、前頭前皮質のニューロン系統の独自性の特異化に、レチノイン酸シグナル伝達が関わることが示された。これらの知見を総合すると、細胞タイプの多様性の出現パターンと細胞運命の指定にクロマチンの状態が大きく寄与することが明らかになった。これらの結果は、皮質の発生モデルとしての大脳オルガノイドの忠実度とロバスト性を評価するための基本的枠組みを提供している。

