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人間行動学:行動ナッジはCOVID-19のワクチン接種を増加させる

Nature 597, 7876 doi: 10.1038/s41586-021-03843-2

ワクチン接種率を高めることは、公衆衛生上の非常に重要な課題である。ワクチン忌避や、接種の意思はあるものの接種に至らない例を打開するには、効果的なコミュニケーション戦略が必要である。今回我々は、2つの連続した無作為化対照試験を行って、行動的介入が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種率に与える影響を検証した。ワクチン接種を強調し、容易と感じさせるテキストベースの通知を考案し、あるヘルスケアシステムから参加者を集め、ワクチン接種適格となったという通知を受け取った後、1日目(1回目の無作為化対照試験、参加者数n = 9万3354、試験登録番号NCT04800965)、あるいは8日目(2回目の無作為化対照試験、参加者数n = 6万7092、試験登録番号NCT04801524)に通知を送付した。1回目の通知では、そのヘルスケアシステム内の接種予約率が6.07パーセントポイント(84%)、ワクチン接種率が3.57パーセントポイント(26%)上昇した。2回目の通知では、予約率が1.65パーセントポイント、接種率が1.06パーセントポイント上昇した。1回目の通知は、参加者にワクチン接種の当事者意識を持たせるよう考案した場合に、より高い効果を示した。しかし、1回目の通知に、ワクチン忌避を解決するような動画による情報介入を組み合わせた場合、その効果が高まったという証拠は得られなかった。さらに、ワクチン接種の意思を調べるオンライン研究を行ったところ(参加者数n = 3181)、1回目の無作為化対照試験とは異なるパターンが明らかになった。これは、実地でのパイロット試験介入を行う重要性を浮き彫りにしている。これらの知見は、健康に関わる決断を促すための行動的な後押し(行動ナッジ)を考案する際の参考になり、ワクチン接種を容易にすることや、ワクチンに関して当事者意識を持たせることの重要性が明確になった。

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