がん:頭頸部がんに存在する機能を備えたHPV特異的PD-1+幹細胞様CD8 T細胞
Nature 597, 7875 doi: 10.1038/s41586-021-03862-z
T細胞は腫瘍免疫で重要だが、ヒトがんでの抗原特異的T細胞の分化について理解を深める必要がある。今回我々は、ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性頭頸部がん患者で見られるCD8 T細胞について調べ、HPV E2、E5、E6タンパク質に由来する複数のエピトープを明らかにした。これによって、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI四量体を用いた、HPV特異的CD8 T細胞の解析が可能になった。HPV特異的CD8 T細胞はPD-1を発現していて、特定のエピトープに対する腫瘍浸潤CD8 Tリンパ球(TIL)の0.1~10%のレベルで腫瘍中で検出できた。四量体で選別されたHPV特異的PD-1+CD8 TILの単一細胞RNA塩基配列解読解析から、転写状態が異なる3つのサブセットが明らかになった。1つ目のサブセットは、抗原が持続している条件下でT細胞応答の維持に重要な、PD-1+幹細胞様CD8 T細胞に関連するTCF7などの遺伝子群を発現していた。2つ目のサブセットは、エフェクター分子をより多く発現していて、一過性の細胞集団であり、3つ目のサブセットは、最終分化した遺伝子シグネチャーを特徴としていた。T細胞受容体クロノタイプはこれら3つのサブセット間で共有されていて、疑時系列解析によって、幹細胞様細胞から、一過性細胞を経て最終分化細胞へという分化経路が推定された。さらに、in vitroでのHPVコグネイトペプチドによる刺激後に、HPV特異的PD-1+TCF-1+幹細胞様TILは増殖して、よりエフェクターに似た細胞に分化したが、最終分化状態により近づいた細胞は増殖しなかった。増殖能を持ち、機能を備えたHPV特異的PD-1+TCF-1+CD45RO+幹細胞様CD8 T細胞の存在は、HPV陽性の頭頸部がんにPD-1阻害に応答する細胞装置が存在することを示していて、この悪性腫瘍でPD-1標的療法についてさらなる研究を行う必要性の裏付けが得られた。また、治療用のHPVワクチン接種の取り組みは、E6およびE7タンパク質に集中しているが、我々の結果からは、腫瘍反応性の範囲が最大となるCD8 T細胞応答を誘導するワクチン抗原として、E2およびE5の組み入れも検討すべきだと考えられる。

