エレクトロニクス:分子メモリスターに内蔵された決定木
Nature 597, 7874 doi: 10.1038/s41586-021-03748-0
大脳新皮質のニューロン間の樹状突起シナプスによるおびただしい相互接続には、いかなる人工的な電子回路をもはるかにしのぐ高度な意思決定を可能にする、複雑な論理構造が内蔵されている。その物理的な複雑さは、既存の回路製造技術をはるかに超えており、さらに、脳内のネットワークは動的に再構成可能で、変化する環境に柔軟に適応できる。対照的に、最先端の半導体論理回路は、あらかじめ定義された論理機能を実行するよう配線で接続されたしきい値スイッチに基づいている。我々は、論理回路の性能を向上させるために、複雑な論理をナノメートルスケールの材料特性で表現することによって、基本的な電子回路素子を再考している。今回我々は、金属有機錯体の5つの異なる分子酸化還元状態の間の電圧駆動される条件付きの論理相互接続性を用いて、71個のノードを持つ決定木の「雑木林」(複数のif-then-else条件文からなる)を単一メモリスターに内蔵させた。その結果得られたこの分子メモリスター(キャパシター、インダクター、抵抗器からなる組を公理的に補完する、全体として受動的な抵抗変化型スイッチ回路素子である「メモリー抵抗器」)の電流–電圧特性は、1回の掃引サイクルで2つのコンダクタンスレベル間の8通りの再帰的かつ履歴依存性の不揮発性スイッチング遷移を示す。分子の各酸化還元状態の実体は、in situラマン分光法によって決定されて、量子化学計算によって確認され、これによって、電子輸送機構が明らかになった。我々は、この素子だけでできた単純な回路を用い、単一時間ステップで実行し、例えば、エッジコンピューティングにおけるローカルインテリジェンスとして適用できる多変数決定木において、動的に再構成できるステートフルな可換論理と非可換論理を実験的に実証する。

