分子生物学:DarTによるDNA塩基のADPリボシル化の分子基盤
Nature 596, 7873 doi: 10.1038/s41586-021-03825-4
ADPリボシルトランスフェラーゼは、NAD+を使って基質のADPリボシル化を触媒し、細胞内経路を調節したり、毒素を介した細菌の病原性の一因となったりする。可逆的なADPリボシル化は従来、タンパク質特異的な修飾と考えられてきたが、最近のin vitro研究により、核酸が標的であることが示唆されている。今回我々は、DNAのチミジン塩基の特異的可逆的ADPリボシル化が、DarT–DarG毒素–抗毒素系を介してin celluloで起こることを示す証拠を提示する。この毒素–抗毒素系は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、腸管病原性大腸菌(enteropathogenic Escherichia coli;EPEC)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)など、さまざまな世界的病原菌で見つかっている。我々はDarTの構造を報告し、この構造からDarTがPARPファミリーから分岐したタンパク質であることが判明した。この酵素の、リガンドと結合していない状態、反応前、反応後の状態の高分解能構造をセットで解明したところ、カギとなる活性部位のアルギニンを含む特殊な触媒機構が明らかになり、これによってカノニカルなADPリボシルトランスフェラーゼ機構の概念が拡大した。詳しく解明されているDNA修復タンパク質のADPリボシル化複合体PARP–HPF1との比較によって、DarTタイプのADPリボシルトランスフェラーゼが特異的DNA修飾酵素へとどのように進化したかについての手掛かりが得られた。まとめると、我々の構造データと作用機構のデータから、PARPファミリーに属するこの酵素の詳細が明らかになり、核酸のADPリボシル化についての基本的な理解が深まった。また、非カノニカルなDNA修復因子として機能するDarG抗毒素によって元に戻ったチミン結合性ADPリボースDNA付加体が、毒性を誘発する標的化されたDNA損傷に使われるだけでなく、細胞内過程のシグナル伝達戦略としても使われることが明らかになった。我々は、結核菌を例として用い、DarT–DarGが染色体の複製起点でDNAをADPリボシル化することにより増殖を調節することを示す。

