Article
光物理学:黒リンを用いた能動的スペクトル可変型オプトエレクトロニクス
Nature 596, 7871 doi: 10.1038/s41586-021-03701-1
短波長や中波長の赤外領域(1~8 μm)で動作する室温のオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの用途に利用できる。所与の用途に必要な動作波長範囲の実現には、バンドギャップが異なる材料の組み合わせ(例えば、超格子やヘテロ構造)、あるいは半導体合金の成長時における組成の変更が用いられている。しかし、こうした材料は、作製に手間が掛かり、動作範囲が作製後に固定される。オプトエレクトロニクスデバイスの作製後の能動的かつ可逆的な広範囲の動作波長の調整可能性は、非常に望ましい特徴だが、そうしたプラットフォームはまだ開発されていない。今回我々は、理想的な候補として黒リンを提示することで、スペクトルを能動的に変えられる高性能の室温赤外オプトエレクトロニクスを実証する。バンドギャップがひずみに対して非常に高感度で0.22 eVから0.53 eVまで変化するという黒リンの性質によって、黒リンでできた発光ダイオードと光検出器の動作波長の連続的かつ可逆的な調整が可能になった。さらに我々は、このプラットフォームを利用して多重化非分散型赤外ガス検知を実証し、単一光源を使って複数の気体(例えば、二酸化炭素、メタン、水蒸気)を検出した。今回の成果は、能動的なスペクトルの調整可能性と高い性能の維持を両立させることで、技術的なギャップを埋め、オプトエレクトロニクス用途における発光スペクトルや検出スペクトルのさまざまな要求を満たす可能性のある方法を提示している。

