コロナウイルス:感染から1年後のSARS-CoV-2に対する中和の範囲は自然に拡大していた
Nature 595, 7867 doi: 10.1038/s41586-021-03696-9
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まってから1年以上経過しているが、いくつかの有効なワクチンが利用可能であるにもかかわらず、制御は依然として難しい。パンデミック制御の進展が遅れている原因は、より高い伝播性や抗体への抵抗性を持つと考えられる変異株の出現にある。今回我々は、COVID-19からの回復者63人からなるコホート(うち41%はmRNAワクチンを接種済み)における、SARS-CoV-2感染後1.3か月、6.2か月、12か月の時点での評価について報告する。ワクチン接種を受けていない場合、SARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)に対する抗体反応性、中和活性、RBD特異的な記憶B細胞の数は、感染後6〜12か月の間、比較的安定していた。ワクチンを接種すると、体液性応答の全ての構成要素が増加し、予想通り、懸念される変異株に対する血清中和活性は、未感染者がワクチン接種によって得られる最初の武漢株(Wuhan Hu-1)に対する中和活性と同程度あるいはそれ以上となった。これらの広範な応答の基盤となる機構には、継続的な抗体の体細胞変異や記憶B細胞クローンの代謝回転に加え、SARS-CoV-2のRBD変異(懸念される変異株に見られる変異など)に対して非常に抵抗性のあるモノクローナル抗体の産生が含まれる。さらに、広範で強力な活性を持つ抗体を発現するB細胞クローンは、時間の経過とともにレパートリーに選択的に維持され、ワクチン接種後に顕著に拡大した。これらのデータは、回復期患者の免疫が非常に長く持続すること、また、利用可能なmRNAワクチンの接種を受けた回復期患者では、流行中のSARS-CoV-2変異株を防御すると考えられる抗体や記憶B細胞が産生されることを示唆している。