分子生物学:ゲノムの安定性にはNORADが誘発するPumilioの相分離が必要である
Nature 595, 7866 doi: 10.1038/s41586-021-03633-w
液–液相分離は、細胞内区画化の重要な仕組みである。相分離した凝縮物へのRNAの分離はRNAの代謝に幅広く影響するが、特定のRNAが、RNA結合タンパク質(RBP)のような相互作用する因子の調節に相分離を用いているのかどうか、もし用いているとしたら、その仕組みはどのようなものなのか、また、そうした調節性相互作用が表現型にどう影響するのかは、ほとんど解明されていない。今回我々は、RNAを原動力とする相分離が哺乳類細胞における重要な仕組みであり、この仕組みを介して長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)がRBPの活性を制御し、ゲノムの安定性を維持していることを明らかにする。lncRNAであるNORADは、Pumilio(PUM)タンパク質を阻害することによって異常な有糸分裂を防いでいる。我々は、NORADが他の数千種類に及ぶ他のPUM結合転写産物に打ち勝って、相分離によるPUM凝縮物(NPボディと命名)形成の核となり、PUMを阻害することを示す。PUM誘引の二重機構では、多価のPUM–NORAD相互作用とPUM–PUM相互作用が関わっていて、NORADは競合によって化学量論レベルを超える量のPUMをNPボディに隔離できる。NORADが促進するPUMの相分離の崩壊は、PUMの過剰な活性とゲノムの不安定性につながり、これらはPUM凝縮物の形成を促す合成RNAによって回復する。これらの結果により、RNAの誘発する相分離によってRBPの活性を調節できる機構が明らかになり、この過程がゲノムの維持に重要な役割を担っていることが示された。NORADや他のlncRNAが反復配列構造を持つことは、相分離がlncRNAを介した調節に広く使われている仕組みである可能性を示唆している。

