Article

コロナウイルス:SARS-CoV-2感染はEIDD-2801によって効果的に治療および予防される

Nature 591, 7850 doi: 10.1038/s41586-021-03312-w

ヒト病原体として近年出現したことが知られる全てのコロナウイルスは、おそらくコウモリに起源がある。今回我々は、ヒト肺組織を移植した免疫不全マウス[以下、human lung-only mice(LoM)とする]に基づく単一の実験プラットフォームを使い、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、さらにヒト病原体として新興する可能性のある2つの内在性SARS様コウモリコロナウイルスが、in vivoで効率よく複製されることを実証する。このモデルにおけるウイルス複製は、真正なヒト肺組織で起こり、ウイルスや宿主のいかなる種類の適応も必要としない。我々の結果から、コウモリはヒトに直接伝播し得る内在性コロナウイルスを持っていることが明らかになった。LoMでヒト肺組織のSARS-CoV-2のin vivo感染を詳細に解析したところ、主に感染しているのは、肺胞に存在する2型肺胞細胞や繊毛気道細胞をはじめとするヒト肺上皮細胞であることが分かった。SARS-CoV-2による急性感染は高い細胞変性作用を持ち、ロバストかつ持続的なI型インターフェロンや炎症性サイトカイン、ケモカインの応答を誘導した。また我々は、SARS-CoV-2感染に対する治療および曝露前予防の戦略について検討した。その結果、現在、第II/III相臨床試験中の広域スペクトルの経口抗ウイルス薬であるEIDD-2801の治療的かつ予防的投与が、in vivoでSARS-CoV-2の複製を顕著に抑制し、従って新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防と治療に大きな可能性を持つことが分かった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度