動物学:古生代のステム群ヤツメウナギ類の非アンモシーテス型幼生
Nature 591, 7850 doi: 10.1038/s41586-021-03305-9
アンモシーテス(現生ヤツメウナギ類の濾過摂食性の幼生)は、脊椎動物の祖先に関する仮説に長年影響を与え続けてきた。外見がナメクジウオに似たアンモシーテスから特殊化した捕食性の成体へと変態する、現生ヤツメウナギ類の生活史は、脊椎動物の起源に関して広く受け入れられているシナリオを再現するかに見える。しかし、アンモシーテスの進化的な古さを裏付ける直接的な証拠はなく、脊椎動物における原始的形態のモデルとしてのその位置付けは不確かである。本論文では、古生代のステム群ヤツメウナギ類4属(Hardistiella、Mayomyzon、Pipiscius、Priscomyzon)の幼生および幼形について報告する。これらの標本には、後期デボン紀のゴンドワナ大陸南端より産したPriscomyzon属の孵化期から成体期に至る成長系列が含まれる。これら4属いずれにおいても、幼生にアンモシーテスの典型的な形質は認められなかった。その代わり、これらの幼生は、大きく発達した眼、角質性の歯を伴う摂食装置、後部が閉ざされることによって消化管から独立した鰓篭など、現生ヤツメウナギ類では成体にしか見られない特徴を示している。系統解析の結果、これら非アンモシーテス型の幼生は、ステム群ヤツメウナギ類の独立した3つ以上の系統で見られることが明らかになった。この広がりは、アンモシーテスが脊椎動物の祖先の名残ではなく、現生ヤツメウナギ類の系統で生活史が特殊化した結果であることを強く暗示している。以上の系統学的知見からはまた、ヌタウナギ類とヤツメウナギ類の最終共通祖先は、濾過摂食性の幼生期を持たない巨食性(macrophagous)の捕食者であったことも示唆された。従って、全ての現生脊椎動物の最終共通祖先の形質をよりよく表すのは、現生の円口類ではなく、円口類と顎口類のステム群をそれぞれ構成する、装甲を持つ「甲皮類」がふさわしいと考えられる。

