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コロナウイルス:重症COVID-19における防御免疫状態の全身的な欠如と標的化

Nature 591, 7848 doi: 10.1038/s41586-021-03234-7

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染は、一部の人には多面的かつ全身的な影響を及ぼすが、他の多くの人が経験するのはより軽微な症状である。今回我々は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病理における重症の表現型と軽症の表現型の違いと、そうした違いの起源についてより包括的に理解するために、全血保存単一細胞解析プロトコールを行って、好中球、単球、血小板、リンパ球、血清成分を含む、全ての主要な血中免疫細胞タイプからの寄与を統合した。その結果、COVID-19軽症患者では、全ての細胞集団にわたってインターフェロン誘導遺伝子(ISG)群の協調した発現パターンが見られたのに対し、重症患者ではこれらのISG発現細胞が全身的に欠如していることが分かった。逆説的だが、COVID-19重症患者では、抗SARS-CoV-2抗体の抗体価が非常に高く、軽症患者と比較してウイルス量が低かった。COVID-19重症患者由来の血清を調べたところ、これらの患者では、細胞のインターフェロン応答を抑制する保存されたシグナル伝達回路が活性化され、これによって軽症例と関連付けられているISG群発現細胞の産生を機能的に阻止する抗体が独自に産生されることが示された。多くのCOVID-19患者や、おそらくは他のウイルス感染症の患者でも、過度な抗体応答によって免疫系がそれ自体と戦うことになる。我々の知見によって、COVID-19重症患者でウイルス防御を再び活性化させる免疫療法のための標的候補が明らかになった。

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