Article

生化学:1つのRNA結合タンパク質の細胞内での反応速度論的特徴

Nature 591, 7848 doi: 10.1038/s41586-021-03222-x

高等真核生物の細胞での遺伝子発現は、数千のRNA結合タンパク質(RBP)と数万のRNAの間の相互作用の集大成である。RBPがRNA上の結合部位に結合し、そこから解離する反応の速度論的性質は、細胞のRNA–タンパク質相互作用の協調に極めて重要である。しかし、細胞内でのこのような相互作用の速度論的パラメーターは、これまで実験で測定されていない。今回我々は、フェムト秒パルス紫外線レーザーを用いた時間分解RNA–タンパク質架橋化反応と、それに続く免疫沈降およびハイスループット塩基配列解読によって、RBPの1種であるDAZLの、細胞内に存在する数千のRNA上結合部位に対する結合と解離の速度論的性質が決定できることを示す。この架橋と免疫沈降の速度論的観察(KIN-CLIP)法により、DAZLが個々の結合部位に結合している時間はわずか数秒、もしくはそれ以下だが、結合部位にDAZLが結合していない状態は、それに比べると著しく長いことが明らかになった。このデータはまた、多くのRNAでDAZLは近接する複数の結合部位からなるクラスターに結合することを示している。mRNAレベルとリボソームの会合に及ぼすDAZLの作用は、このようなクラスターでのDAZL結合の累積確率と相関する。速度論的データとmRNAの特性を統合することにより、DAZL–RNA結合とDAZLの機能が定量的に結び付けられた。この結果は、細胞内でのRNA–タンパク質相互作用の速度論的パラメーターをどのように測定できるか、そして、このようなデータによってRBP–RNA結合とRBPの細胞での機能がどのように関連付けられるかを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度