生物物理学:ウェッティング現象は相分離で生じた区画と細胞質ゾルのオートファジーを調節する
Nature 591, 7848 doi: 10.1038/s41586-020-2992-3
細胞内の物質が区画化されて液滴様の構造が生じるのは、液–液相分離に特徴的に見られる現象だが、液滴を除去する仕組みについては、ほとんど解明されていない。ただ、液滴はオートファジーによって分解されることが証拠から示唆されている。オートファジーは高度に保存されている分解系で、シート状の膜がわん曲して細胞質の一部を隔離して、二重膜に囲まれたオートファゴソームが作られる。今回我々は、タンパク質p62(別名SQSTM1)を含む液滴をオートファゴソームが隔離する様子を生細胞で観察し、タンパク質を含まない液滴の表面で、部分的なウェッティング現象を介して二重膜に囲まれたオートファゴソームに似た小胞が形成されることをin vitroで明らかにした。最小物理モデルによって、液滴の表面張力が膜シートの形成を助けていることが明らかになった。このモデルからはまた、わん曲するシートは、液滴を分割して一部だけを隔離するか、あるいは液滴全体を隔離するかのどちらかであると予測された。オートファゴソームによる隔離は、液滴とシートの接着強度の変動には影響を受けにくいことが分かった。しかし、部分的にウェッティング現象を生じたオートファゴソーム膜シートの両面はそれぞれ異なった環境にさらされており、これがシートの曲がる方向を決定できる。液滴の物質特性と膜シートとのこのような相互作用を発見したことにより、液滴のオートファジー(「fluidophagy」と命名)を支える機構が明らかになった。さらに、液滴が細胞質ゾルを分解するオートファゴソームのために液体を集める土台として働くか、特異的なオートファジー基質として働くかを切り替える機構も明らかになった。液滴を介したオートファジーは、弾性毛細管現象を駆動力とする、これまで報告されていなかったタイプの過程であり、細胞質ゾルの組織化にウェッティング現象が重要であることを明確に示していると我々は考える。

