がん:染色体粉砕はがんにおける遺伝子増幅の進化を駆動する
Nature 591, 7848 doi: 10.1038/s41586-020-03064-z
染色体の局所的増幅は、がん遺伝子の過剰発現を介してがんイニシエーションの一因となり、抗がん剤の効果を低下させる作用を持つ遺伝子の発現を増加させることで、がんの治療抵抗性を生み出す原因となる。今回我々は、化学療法抵抗性を獲得したクローン細胞分離株の全ゲノム塩基配列解読を行い、染色体粉砕(クロモスリプシス)が環状の染色体外DNA(ecDNA)増幅(DM染色体とも呼ばれる)の主要な駆動要因であり、この過程はポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)と、DNA依存性プロテインキナーゼの触媒サブユニット(DNA-PKcs)に依存した機構を介して起こることを示す。縦断的解析から、薬剤耐性のさらなる上昇は、染色体粉砕の繰り返しによるecDNAの構造的進化によって獲得されることが明らかになった。in situ Hi-C塩基配列解読からは、ecDNAは選択的に染色体末端付近に繋留されていて、DNA損傷があると再び染色体に組み込まれることが分かった。初めは低レベルの薬剤選択下で形成された染色体内増幅は、継続的な切断–融合–架橋サイクルを経て長さ100メガ塩基を超えるアンプリコンを生成し、それらが間期に見られる架橋構造(interphase bridge)内に捕らえられた後に粉砕され、その結果、染色体粉砕の基質となるecDNAを封入した微小核が作り出される。また、薬剤抵抗性の獲得やがん遺伝子の増幅が起きたヒトがんにおいて、局所的な遺伝子増幅と関連した同様のゲノム再編成プロファイルが見つかった。我々は、染色体粉砕が、ゲノムDNAの再編成と増幅を起こしてecDNAの生成を加速させ、変化した増殖条件に対する耐性の急速な獲得を可能にする主要な機構であると提案する。

