腫瘍生物学:NSDメチルトランスフェラーゼによるヌクレオソームH3K36メチル化の分子基盤
Nature 590, 7846 doi: 10.1038/s41586-020-03069-8
NSD(nuclear receptor-binding SET domain protein)ファミリーのヒストンメチルトランスフェラーゼ(NSD1、NSD2、NSD3が含まれる)は、クロマチンの調節に重要な役割を担っており、発がんに関与するとされている。NSD酵素は自己阻害状態を示し、この状態はヌクレオソームへの結合によって解除され、ヒストンH3のLys36(H3K36)のジメチル化が可能になる。しかし、この機構の分子基盤はほとんど分かっていない。今回我々は、モノヌクレオソームと結合したNSD2とNSD3のクライオ電子顕微鏡構造を解いた。その結果、NSD2とNSD3のモノヌクレオソームへの結合によってリンカー領域近くのDNAがほどけて、ヒストン八量体とDNAの解けた部分の間への触媒性コアの挿入が促進されることが分かった。NSD2(またはNSD3)とヌクレオソームの間のDNAおよびヒストン特異的な接触からなるネットワークが、ヌクレオソーム上の酵素の位置を正確に規定していて、これによってH3K36メチル化の特異性が説明される。NSDタンパク質とヌクレオソームの間の分子間接触は、NSD2やNSD3に頻発する複数のがん関連変異により変化していた。このような変異を含むNSDはin vitroおよび細胞内で触媒活性が過剰活性化していて、それらの異所性発現により、がん細胞の増殖と異種移植腫瘍片の成長が促進される。まとめると我々の研究は、NSD2とNSD3の、ヌクレオソームを用いる認識とヒストン修飾の機構への分子レベルでの知見をもたらすものであり、これはNSDファミリーのタンパク質を治療標的とする戦略に結び付く可能性がある。

