大気科学:熱帯降水量の局所的な海面水温に対する高い感度
Nature 589, 7842 doi: 10.1038/s41586-020-2887-3
降水過程と大気循環過程は結合しており、熱帯の海面水温はこれらを通して全球の天気や気候を駆動している。局所的な海面水温の上昇は降水量を増加させる傾向があるが、こうした局所的な制御は別の場所の条件がもたらす遠隔効果から切り離すのが難しい。そうした遠隔効果の例に、赤道太平洋におけるエルニーニョ/南方振動(ENSO)事象があり、これによって熱帯全域の降水量が変化する。熱帯降水量と関連する大気循環の大部分は深さがあり、上限は対流圏界面にまで達する。対流圏の下部に影響を与える浅い大気循環も発生するが、それらと降水量の相互作用の重要性は明らかにされていない。降水量観測値の不確かさと浅い大気循環の観測結果の不足によって、海洋が天気と気候に及ぼす影響に関する我々の理解はさらに妨げられている。数十年にわたる研究にもかかわらず、多くの数値モデルシミュレーションには、過度に幅広い熱帯降雨帯、「ダブルITCZ(熱帯収束帯)問題」、ENSOへの弱過ぎる応答など、依然としていくつもの偏りが残されている。そうした偏りは我々の理解に空白があることを示しており、予報や予測の信頼性を低下させている。今回我々は、観測結果を用いて、季節的な熱帯降水量が局所的な海面水温に対して高い感度を持つことを明らかにする。観測に基づく最良推定値は、飽和比湿が1 g/kg変化するごとに降水量が80%変化するというものであった(飽和比湿はそれ自体が海面水温の関数である)。今回得られた感度は、調べた47の気候モデルのうち43でその値を上回り、強力な浅い大気循環と関連していた。感度がより現実的な(80%に近い)モデルでは、広範な測定基準において偏りが小さかった。今回の結果は、気候学的降水量が1日当たり約1 mm以上の地域全体で、時間的変動と空間的変動の両方に当てはまる。これらの知見は、複数の独立した観測結果、物理的制約、モデルデータを用いた我々の解析によって支持された。モデル挙動の広がりはさらに、浅い対流における差異と結び付けられ、これによって、数十年規模の気候予測を通した季節的予報を改善するための加速的な研究に新たな焦点がもたらされた。

