気候科学:気候変動下における湖沼の熱波
Nature 589, 7842 doi: 10.1038/s41586-020-03119-1
湖沼生態系とその中に生息する生物は、極端な高温事象の発生の増加などの温度変化に対して脆弱である。しかし、湖沼の熱波(湖面水温が極端に高くなる期間)と、それが地球温暖化の下でどのように変化するかについては、ほとんど分かっていない。今回我々は、衛星観測と数値モデルを用い、世界各地の数百の湖沼について1901〜2099年における湖沼の熱波の変化を調べた。その結果、21世紀末までに湖沼の熱波がより高温にかつより長くなることが示された。温室効果ガス排出量の多いシナリオ[代表的濃度経路(RCP)8.5]では、過去の期間(1970〜1999年)と比較して定義される湖沼の熱波の平均強度が、3.7 ± 0.1°Cから5.4 ± 0.8°Cに増大し、平均継続期間が7.7 ± 0.4日から95.5 ± 35.3日へと劇的に長くなると予測された。一方、温室効果ガス排出量の少ないRCP 2.6シナリオでは、熱波の強度は4.0 ± 0.2°Cに増大し、継続期間は27.0 ± 7.6日へと長くなると予測された。過去と未来の両方の期間において、深い湖沼(水深60 mまで)では浅い湖沼よりも、表層の熱波の継続期間は長いが強度はより低くなることが分かった。21世紀において湖沼が温暖化するにつれて、熱波が複数の季節にわたって発生するようになり、一部の湖沼では熱波状態が永続的になると考えられる。湖沼の熱波は、湖沼の長期的な温暖化の悪影響を悪化させ、湖沼の物理的構造や化学的性質に広範な影響を及ぼす可能性が高い。湖沼の熱波によって、水生生物種と水界生態系の回復力が限界に達し、種の組成が変化する可能性がある。その結果、湖沼の生物多様性と、湖沼が社会にもたらす重要な生態学的恩恵や経済的利益が脅かされる可能性がある。

