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微生物学:結核治療薬ベダキリンに結合したマイコバクテリアATP合成酵素の構造
Nature 589, 7840 doi: 10.1038/s41586-020-3004-3
結核は、世界の感染症による死亡の主原因であり、現在の第一選択薬に対する耐性が増加し続けている。結核の原因菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は低エネルギー条件下でも生存可能で、そのため感染中に休眠状態を維持することができ、多くの抗生物質に対して感受性を低下させている。ベダキリンは、2005年にスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)に対する表現型スクリーニングで見つかったリード化合物から開発された薬剤で、潜伏感染した結核菌も殺菌でき、多剤耐性結核や広範囲薬剤耐性結核の治療の基本となっている。ベダキリンは、偏性好気性菌であるマイコバクテリウム属に不可欠なATP合成酵素を標的とするが、無傷の酵素にベダキリンがどのように結合するのかは不明である。今回我々は、スメグマ菌のATP合成酵素について、単独の状態およびベダキリンと複合体を形成した状態でのクライオ電子顕微鏡構造を決定した。ベダキリンが存在しない構造は、αサブユニットから伸びる鉤状の伸長部分が酵素反応が逆方向に進むのを妨げ、ATP加水分解を阻害して低酸素条件下でエネルギーを保つ働きをすることを示唆している。ベダキリンが結合するとATP合成酵素に大規模なコンホメーション変化が起こり、サブユニットaとサブユニットcの界面に狭い結合ポケットが生じる。このことから、ベダキリンが結核に効く抗生物質となる理由が説明される。

