計算材料科学:無秩序シリコンにおける構造転移と電子転移の起源
Nature 589, 7840 doi: 10.1038/s41586-020-03072-z
構造的に無秩序な材料からは、種々の無秩序相(「ポリアモルファス状態」)がどのように共存でき、ある相から別の相へと変換できるのかといった基本的な問題が提起される。アモルファス(非晶質)シリコンは広く研究されており、周囲条件では4配位共有結合ネットワークを形成するが、圧力下でははるかに配位数の多い金属相を形成する。しかし、最先端の実験手法や計算手法であっても、例えばシミュレーションで検討できる系のサイズの点で本質的制限があるため、無秩序シリコンにおける構造転移の詳細な機構は十分に解明されていない。今回我々は、精密な量子力学計算で訓練した原子論的機械学習モデルが、原子10万個の系(長さスケールは10 nm)の液体–アモルファス転移やアモルファス–アモルファス転移を記述して、構造、安定性、電子的特性を予測するのにいかに役立ち得るかを示す。今回のシミュレーションによって、外圧の増大に伴いアモルファスシリコンに生じる3段階からなる一連の変換が明らかになった。最初の段階では、低密度ポリアモルファス領域と高密度ポリアモルファス領域が、逐次に現れるのではなく共存することが見いだされた。次の段階では、構造崩壊による別個の超高密度アモルファス(VHDA)相の生成が観察された。最後の段階では、今回のシミュレーションによって、このVHDA相の過渡的性質、すなわち、微結晶の核生成が急速に進み、これが最終的に多結晶構造の形成につながることが示された。これは、実験結果とは一致しているが、以前のシミュレーションでは見られなかった性質である。電子状態密度の機械学習モデルによって、VHDA形成時の金属性の始まりとそれに続く結晶化が確かめられた。今回の結果は、液体状態とアモルファス状態のシリコンに光を当てるものであり、より広い意味では、機械学習主導の予測的材料モデリング手法の例となる。

