がん:PCSK9の阻害はがんの免疫チェックポイント療法を増強する
Nature 588, 7839 doi: 10.1038/s41586-020-2911-7
免疫療法は、治療を受けた人の10〜30%で長期生存の実現に成功しているにもかかわらず、依然としてほとんどのがん患者には効果がない。従って、そのような免疫「チェックポイント」療法(このように呼ばれるのは、T細胞においてチェックポイントシグナル伝達経路を阻害するタンパク質を抑制し、これらの免疫細胞の抑制を解除してがん細胞を標的とさせることを目的とするためである)を増強する新しい手法を特定すべく、多くの取り組みが進められている。今回我々は、コレステロール代謝の調節に重要なタンパク質であるPCSK9を阻害すると、PCSK9のコレステロール調節機能とは独立した機構を介して、免疫チェックポイント療法に対する腫瘍の応答を高められることを示す。マウスがん細胞でPCSK9遺伝子を欠失させると、マウスでのがん細胞の増殖が細胞傷害性T細胞依存的に大きく減弱あるいは阻害された。また、チェックポイントタンパク質PD1を標的とした免疫療法の有効性も向上した。さらに、臨床で承認されているPCSK9中和抗体は、マウスがんモデルにおいて、腫瘍増殖の抑制で抗PD1療法と相乗効果を示した。PCSK9を、遺伝的欠失あるいはPCSK9抗体の使用によって阻害すると、腫瘍細胞表面の主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHC I)タンパク質の発現が上昇し、細胞傷害性T細胞のロバストな腫瘍内浸潤が促進された。機構的には、PCSK9は、MHC Iと物理的に結合して、リソソームへの再配置や分解を促進することにより、MHCIの細胞表面へのリサイクルを阻止できることが分かった。まとめるとこれらの結果は、PCSK9の阻害が、がんに対する免疫チェックポイント療法を増強する有望な方法であることを示唆している。

