精密測定:光原子時計遷移におけるエンタングルメント
Nature 588, 7838 doi: 10.1038/s41586-020-3006-1
最先端の原子時計は、2つの原子準位間のエネルギー差を精密に検出することに基づいており、そうしたエネルギー差は、所定の時間間隔にわたって積算される量子位相で測定される。光格子時計(OLC)の安定度は、ローカルオシレーターレーザー(検出用レーザー)による原子系の測定時間の有限性に起因する雑音(ディック雑音)と、離散的な測定結果に関連する量子雑音から生じる標準量子限界(SQL)の両方によって制限される。最近、ディック雑音を除去するスキームが提案され、実装されているが、原子間の量子相関(エンタングルメント)の操作によるSQLを超える性能は、安定度の限られたマイクロ波時計を用いた原理検証実験でしか実証されていない。量子計測では、光時計遷移におけるエンタングルメントの生成とSQLを超えるOLCの動作が重要な目標となっているが、実験的にはまだ実証されていない。今回我々は、OLC遷移における多原子エンタングル状態の生成について報告するとともに、これを用いて、ローカルオシレーターの雑音を除去した後のアラン偏差がSQLを下回るラムゼーシーケンスを実証する。我々は、数百個のイッテルビウム171原子からなる集団を用いることで、SQLを超える4.4−0.4+0.6 dBの計測ゲインを達成した。これは、平均化時間が2.8 ± 0.3倍短縮されたことに相当する。今回の結果は、現状ではローカルオシレーターの位相雑音とディック雑音によって制限されているが、エンタングルメントを用いることで最先端のOLCの性能向上が見込めることを示している。これによって、時間測定の精度と正確度のさらなる向上とともに、物理の基本法則の精密検証、測地、重力波検出を含む多くの科学技術的な応用が可能になる。

