化学:内部アルケンへのアミンN–H結合の触媒的不斉付加
Nature 588, 7837 doi: 10.1038/s41586-020-2919-z
アルケンのヒドロアミノ化(アルケンへのアミンのN–H結合の付加)は、アルケンとアミンという豊富に存在する2種類の化学工業原料から、完全なアトムエコノミーでアルキルアミンを生成する基本的だが難しい有機変換である。アミン、特にキラルアミンはさまざまな天然物や薬剤によく見られる部分構造であるため、この反応はとりわけ重要である。ヒドロアミノ化触媒の開発に多大な努力が注がれてきたにもかかわらず、分子間ヒドロアミノ化が起こるアルケンの大半は、共役アルケン、ひずんだアルケン、末端アルケンに限定されている。活性化されていない内部アルケンへのアミンN–H結合の直接付加によって分子間ヒドロアミノ化が起こる例は、光触媒的ヒドロアミノ化を含めてほんのわずかであり、内部アルケンへの分子間不斉付加は知られていない。実際、配向基を持たず活性化もされていない種類のアルケンのうち、現在エナンチオ選択的直接分子間ヒドロアミノ化が知られているのは、中程度のエナンチオ選択性で起こる反応だけである。今回我々は、活性化されていないさまざまな内部アルケン(非環状アルケンと環状アルケンなど)の分子間ヒドロアミノ化を触媒して高いエナンチオ選択性でキラルアミンを生成する、カチオン性イリジウム系を報告する。このイリジウム触媒は、トリメチルシリル置換アリール基とトリフルイミド対アニオンを持つホスフィン配位子を有しており、反応設計にはアミンとして2-アミノ-6-メチルピリジンを取り入れて、アンモニア代替物として機能させながら触媒サイクル内の複数段階の速度を向上させる。今回の設計原理は、活性化されていない内部アルケンに他の試薬のN–H結合(さらにはO–H結合やC–H結合)を付加して、基本原料から機能分子の合成を合理化する道筋を示している。

