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複雑性科学:人の移動性のスケール
Nature 587, 7834 doi: 10.1038/s41586-020-2909-1
個人の移動パターンと集団の移動パターンに関する現在の理解は、その中心において矛盾がある。一方では、膨大な経験的データセットの解析に基づく、人の移動性に関する非常に影響力のある多くの文献において、人の移動は特徴的な空間スケールの証拠を示さないことが見いだされている。そうした研究では、人の移動性はスケールフリーとして記述される。その一方で、地理的には、個々の建物から近隣地区、都市、地域、国までの意味ある記述レベルを指すスケールの概念は、社会経済的相互作用、政治力学、文化力学などの人間行動のさまざまな側面を記述するのに重要である。今回我々は、日常的な人の移動性には、移動行動を限定する空間的「コンテナ」に相当する、意味あるスケールが実際に存在することを示して、この見かけのパラドックスを解決する。スケールフリーという結果は、複数のコンテナにわたる移動を総計すると生じる。我々は、個人の軌跡が与えられれば、こうした地理的コンテナのサイズだけでなくそれらの近隣地区や都市などを推測することのできる単純モデルを提示する。70万人を超える個人の軌跡を特徴付けるコンテナが、実際に典型的なサイズを持つことが見いだされた。我々は、今回のモデルが、非常に現実的な軌跡も生成でき、国、ジェンダーグループ、都市圏–地方をまたぐ移動行動に見られる相違を理解するための方法をもたらすことを示す。

