生化学:ヒトHSP70によるアミロイド離散の分子レベルでの分析
Nature 587, 7834 doi: 10.1038/s41586-020-2904-6
高度に秩序化された構造を持つ原繊維タイプの凝集体の封入体への蓄積は、パーキンソン病のような神経変性疾患の特徴の1つである。このようなアミロイド原繊維凝集体は非常に安定性が高いために、細胞内タンパク質の品質管理装置にとっては扱いの難しい基質である。しかし、ヒトHSP70シャペロンとそのコシャペロンであるDNAJB1とHSP110は、パーキンソン病に関連するシナプス前タンパク質αシヌクレインからin vitroで形成された原繊維を離散させることができる。この独特な活性の基盤となる機構はほとんど解明されていない。今回我々は、生化学的手法と核磁気共鳴分光法を使って、アミロイド原繊維の離散過程の重要な数段階を明らかにする。DNAJB1は、オリゴマーとなったαシヌクレインを多価相互作用を介して特異的に認識し、HSP70を選択的に原繊維へと誘導することが分かった。HSP70とDNAJB1は、アミロイドコア自体ではなく、αシヌクレインの露出していて可動性のアミノ末端とカルボキシ末端を介して原繊維に結合する。DNAJB1とHSP110の相乗作用によって、複数のHSP70分子が原繊維表面に密に詰め込まれて並び、この状態は「エントロピーによる引っ張り力」の発生には理想的であるため、原繊維の離散が強く加速される。アミロイド原繊維の離散におけるDNAJB1とHSP110の協働は、これまでHSP70コシャペロンの働きとされてきた基質の誘導と再利用機能を超えるもので、アミロイド基質のリモデリングに能動的で不可欠な役割を果たしている。アミロイドの離散に不可欠な前提条件について、このような機構的手掛かりが得られたことは、神経変性疾患への新しい治療的介入法の基盤となる可能性がある。

