Article

生理学:心臓カルシトニンによる傍分泌シグナル伝達は心房の繊維形成と不整脈を制御する

Nature 587, 7834 doi: 10.1038/s41586-020-2890-8

ヒトで最も多く見られる心不整脈である心房細動は、死亡率と罹患率、そして特に脳卒中リスクに関与する重要な要因である。心房組織の繊維症は、心房細動の中心的な病態生理学的特徴で、これが治療を難しくもしているが、その基礎となる分子機構についての理解は進んでおらず、現在適切な治療法がないことから、研究が必要とされている。今回我々は、骨代謝に関与する甲状腺のホルモン産物であるカルシトニンが、心房心筋細胞でも相当量産生されており、傍分泌シグナルとして働いて近傍のコラーゲン産生繊維芽細胞に作用し、その増殖と細胞外マトリックスタンパク質分泌を制御することを明らかにする。マウスでカルシトニン受容体シグナル伝達を全体的に破壊すると、心房繊維症が生じ、心房細胞を起こしやすくなった。心房でLKB1(liver kinase B1)が特異的にノックダウンされたマウスでは、カルシトニンの心房特異的なノックダウンで心房繊維症が促進され、心房細動の自発的エピソードが延長したのに対し、心房特異的なカルシトニンの過剰発現は心房繊維症と細動を共に阻止した。持続性心房細動の患者は、心調律が正常な対照群に比べて心筋のカルシトニンレベルが6分の1であり、繊維芽細胞膜のカルシトニン受容体が喪失していた。ヒト心房繊維芽細胞のトランスクリプトーム解析では、カルシトニン曝露後の変化はほとんど見られなかったが、プロテオーム解析では、繊維化や感染、免疫応答に関連する細胞外マトリックスタンパク質や経路、そして転写調節における広範囲な変化が明らかになった。従って、破壊された心筋カルシトニンシグナル伝達を回復させる戦略は、心房細動患者の治療手段となる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度