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発生生物学:ヒト、ウシ、マウスの胚における保存された栄養外胚葉プログラムの開始
Nature 587, 7834 doi: 10.1038/s41586-020-2759-x
哺乳類の着床前の初期発生における細胞の指定についての現在の理解は、主にマウスの研究に基づいている。最初の細胞系譜分化事象は桑実胚期に起こり、外側の細胞が栄養外胚葉(TE)の胎盤前駆細胞プログラムを開始する。それに続く発生の諸段階で内側の細胞から内部細胞塊が生じ、これが胚本体と卵黄嚢の前駆細胞になる。最近の遺伝子発現解析から、マウスで初期細胞系譜指定を調節する機構は、ヒトやウシなど、他の哺乳類とは異なる可能性が示唆されている。今回我々は、ヒト、ウシ、マウスの胚において、TEの分離を開始する分子カスケードが進化的に保存されていることを示す。桑実胚期に、外側の細胞は頂端–基底の細胞極性を獲得し、それとともに接触のない領域での非定型プロテインキナーゼC(aPKC)の発現、核でのHippoシグナル伝達経路のエフェクターの発現、TEプログラムの開始を示唆するGATA3などのTE関連因子の制限された発現が起こる。さらに我々は、小分子を用いた薬理学的調節あるいはTrim-Awayタンパク質の除去によるaPKCの阻害によって、桑実胚期のTE開始が障害されることを実証する。我々の比較発生学的解析から、初期細胞系譜指定についての手掛かりが示され、ヒト、ウシ、マウスの胚においてTEプログラムを開始させるのは同様の機構であることが示唆された。

