Article
神経科学:情動的接触と痛みを並行して伝達する脊髄上行路
Nature 587, 7833 doi: 10.1038/s41586-020-2860-1
前側索路は、痛み、温度、接触の情報を脊髄から脳へと伝達する脊髄上行路からなる。前側索路の投射ニューロンは、末梢から発せられる侵害刺激信号がこれらの脊髄投射ニューロンを通じて脳へ向かうことから、疼痛治療の標的として関心が持たれている。しかし、前側索路の構成に関する論理はまだよく分かっていない。今回我々は、投射ニューロンには、構造的に類似したGタンパク共役受容体(GPCR)であるTACR1とGPR83を発現する2つの集団があり、これらが上行路のモジュールとして協同しつつ、温度、接触、侵害刺激の信号を脊髄から橋の外側腕傍核へと伝達していることを示す。Tacr1またはGpr83遺伝子を発現する脊髄–腕傍核(SPB)ニューロンの軸索は、外側腕傍核内の異なる亜核群に結合しており、それぞれの軸索末端を光遺伝学的に強く刺激すると、異なる逃避行動と自律神経応答が誘発された。また、Gpr83を発現するSPBニューロンは、皮膚の機械的刺激に極めて鋭敏で、高閾値および低閾値の一次機械感覚ニューロンの両者から強いシナプス入力を受けていた。注目すべきことに、Gpr83を発現するSPBニューロンの活動と関連する情動価は、刺激の強さに応じて、正にも負にもなった。これらの知見は、SPB経路には解剖学的、生理学的、機能的に異なる下位領域があり、それらが接触や痛みの情動的側面の基盤となっていることを明らかにしている。

