Article

分子生物学:DNAのミスマッチから明らかになったタンパク質–DNA認識におけるコンホメーション上のペナルティー

Nature 587, 7833 doi: 10.1038/s41586-020-2843-2

転写因子はゲノムの特定の塩基配列を認識して、複雑な遺伝子発現プログラムを調節している。転写因子が塩基の読み取りと形状の認識を組み合わせて使い、特定のDNA塩基配列に結合することは十分確立されているが、タンパク質–DNA結合のいくつかの基礎的な側面に関してはいまだに解明が進んでいない。多くのDNA結合タンパク質は、本来のB型DNAの枠を超えたDNAの構造変化を引き起こす。しかし、DNAの変形に関連するエネルギーコストが認識にどのように役立っているのかを調べるのは難しいことが分かっている。それは、ゆがめられたDNAの、結合していない集合体中での存在量が少ないためである。今回我々は、SaMBA(saturation mismatch-binding assay)と名付けたハイスループットアッセイを行って、DNAのコンホメーション上のペナルティーが転写因子–DNA認識に果たす役割を調べた。SaMBAでは、不適正に対合した(ミスマッチ)塩基対を導入して、ワトソン・クリック塩基配列の変化で引き起こされるよりもはるかに大きなゆがみをDNAにあらかじめ誘発する。重要なことに、ミスマッチの約10%では転写因子の結合が増加し、調べた22の転写因子のそれぞれにおいて、結合の親和性を上昇させるようなミスマッチが少なくとも1個は見つかった。また、ミスマッチによって、非特異的部位が高親和性部位に、また、高親和性部位が既知のどのカノニカル結合部位よりも強い親和性を示す「超親和性部位」に変化していた。高分解能のX線構造決定と核磁気共鳴法、構造解析を組み合わせることにより、結合を増加させるDNAミスマッチの多くが、タンパク質の結合によって引き起こされるのと同等なゆがみを引き起こすことが明らかになった。つまり、DNAをゆがめるエネルギーのコストを一部前払いするわけである。これらの知見から、コンホメーション上のペナルティーがタンパク質–DNA認識の重要な決定因子の1つであることが示され、ミスマッチによって転写因子が動員され、細胞内の複製や修復活動を調節する仕組みが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度