細胞生物学:新生MCMタンパク質と親のMCMタンパク質との間の平衡が、複製中のゲノムを保護する
Nature 587, 7833 doi: 10.1038/s41586-020-2842-3
MCM(minichromosome maintenance)タンパク質はDNA依存性のATPアーゼで、複製起点に結合し、この起点がDNA複製を1回だけ進行させるのを許可する。G1期には過剰なMCM2–7が複製前複合体(pre-RC)としてクロマチン上に集合し、そのごく一部だけがゲノム複製に必要な活性を持ったCDC45–MCM–CINS(CMG)ヘリカーゼになる。細胞がこうしたMCMの余剰分を作る理由、また余剰MCMを複数世代にわたって維持する理由、また、このMCMプールを少し減らしただけで複製中のゲノムの完全性が損なわれる理由は、いまだに解明されていない問題である。今回我々は、娘細胞が誤りのないDNA複製を維持するために、その母細胞がクロマチンに結合した(親)MCMの再利用と新しい(新生)MCMの合成の両方によって、核にMCMプールを構築することを明らかにする。MCM全てにpre-RCを作る能力があるが、本質的に安定で選択的にCMGへと成熟するMCMは、親プールであることが分かった。これとは対照的に、新生MCM3–7は細胞質で速やかにタンパク質分解され(MCM2は分解されない)、これらを安定化して核へと移行させるには、MCMの遠縁のパラログであるMCMBP(minichromosome-maintenance complex-binding protein)との相互作用が必要である。MCMBPは、新生MCMのシャペロンとして働くことにより、クロマチンを覆うpre-RCを増やして複製中のゲノムを保護する。これらのpre-RCは、複製起点には関わらないが、レプリソームの移動速度を調整することにより、DNA複製中の誤りを最小限にする。従って、MCMBP欠失細胞でのpre-RCの不足は、DNA合成全体は変化させないが、個々のレプリソームの移動速度を高め、非対称性を強めてDNAの損傷をもたらす。それゆえ、MCMの余剰分は、真核細胞がDNAを複製する速度を制限することによって、ゲノム複製のロバスト性を高めている。MCMレベルの低下が、わずかなものであっても、ゲノムの不安定化や腫瘍発生の頻度上昇につながる理由は、生理的な複製フォーク速度の変化でこのように説明できるかもしれない。

