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免疫学:COVID-19対策を検証するためのSARS-CoV-2のマウス適合モデル

Nature 586, 7830 doi: 10.1038/s41586-020-2708-8

最近、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の原因病原体である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のヒトへの拡散によって明らかになったように、コロナウイルスは新たな宿主種へ伝播する傾向がある。医療対策を迅速に評価するために、SARS-CoV-2疾患を再現する小動物モデルが緊急に必要とされている。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質はヒトのアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)を受容体とするが、マウスのACE2オルソログとは効率よく相互作用しないため、このウイルスは野生型の実験用マウスに感染できない。今回我々は、逆遺伝学的手法によりSARS-CoV-2スパイクタンパク質とマウスACE2との相互作用を改変し、マウスACE2を用いて細胞に侵入できる組換えウイルスであるマウス適合SARS-CoV-2(SARS-CoV-2 MA)を設計した。SARS-CoV-2 MAは、BALB/c系統の若齢成体マウスと加齢マウスで共に、上気道と下気道での複製が可能だった。SARS-CoV-2 MAは、加齢マウスでより重症の疾患を引き起こし、Hfh4(別名Foxj1)プロモーターの制御下でヒトACE2を発現するHfh4-ACE2トランスジェニックマウスで見られるよりも、臨床的関連性の高い表現型を示した。我々は、マウスACE2の本来の発現を示す免疫能が正常なマウスでワクチンのチャレンジ試験を行い、このモデルの有用性を実証した。さらに我々は、臨床治療薬候補となっているインターフェロンλ1a(IFN-λ1a)がin vitroで初代培養ヒト気道上皮細胞でのSARS-CoV-2複製を強力に阻害し、IFN-λ1aの予防的投与と治療的投与は共に、マウスでのSARS-CoV-2複製を軽減することを示す。まとめると、マウスに適合させたSARS-CoV-2 MAモデルは、加齢に関連した病態形成を示すことを実証しており、ヒトCOVID-19の治療薬としてペグIFN-λ1aの臨床利用を支持するものである。

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