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免疫学:SARS-CoV-2のSタンパク質のRBDを標的とするワクチンは防御免疫を誘導する

Nature 586, 7830 doi: 10.1038/s41586-020-2599-8

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と呼ばれる呼吸器疾患を引き起こし、その広がりはパンデミック(世界的大流行)につながった。このウイルスに対する有効な予防ワクチンが緊急に必要とされている。SARS-CoV-2は、感染の重要な段階として、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を用いて宿主細胞上の受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)と結合する。本論文で我々は、スパイクタンパク質のRBDの319〜545番目の残基からなる組換えワクチンが、マウス、ウサギ、非ヒト霊長類[アカゲザル(Macaca mulatta)]において、注射による単回投与の早くて7日または14日後に強力な機能性抗体応答を誘導することを報告する。ワクチン接種個体の血清は、細胞表面に発現しているACE2へのRBDの結合を阻害し、in vitroでSARS-CoV-2のシュードウイルスおよび生ウイルスによる感染を中和した。特に、ワクチン接種は非ヒト霊長類において、in vivoでのSARS-CoV-2のチャンレジ感染に対しても予防効果を与えた。また、COVID-19患者の血清では、RBD特異的な抗体のレベルが上昇していることが見いだされた。我々は、このワクチンによる抗体応答の誘導には、複数の免疫経路とCD4 Tリンパ球が関与していることを示す。今回の知見は、SARS-CoV-2ワクチンの設計におけるRBDドメインの重要性を明らかにするとともに、RBDドメインに対する抗体の誘導を介した予防ワクチンの開発に根拠を与えるものである。

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