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超伝導体:炭素質硫化水素における室温超伝導

Nature 586, 7829 doi: 10.1038/s41586-020-2801-z

室温超伝導の観測は、実験物理学における長年の課題の1つである。最近、高圧下のいくつかの系で、水素が豊富な物質の高温での従来型超伝導が報告されている。圧力に駆動される硫化水素(H2S)からH3Sへの不均化は、室温超伝導につながる重要な発見であり、155 GPaで203 Kという転移温度が確認されている。H2Sとメタン(CH4)は共に、より低圧で水素と容易に混合してゲスト–ホスト構造を形成し、4 GPaではそのサイズは同程度である。H3Sの前駆体混合物であるH2S + H2に低圧でCH4を導入することで、H2を含有する、水素が豊富なファンデルワールス固体の大きな集合体内での分子交換が可能になる。こうしたゲスト–ホスト構造は、極端な条件での超伝導化合物の構成要素になる。今回我々は、元素前駆体から出発して光化学的に変換させた炭素質硫化水素系において、267 ± 10 GPaで287.7 ± 1.2 K(約15°C)という最高超伝導転移温度の超伝導を実現したことを報告する。この超伝導状態は、ダイヤモンドアンビルセルにおいて、140〜275 GPaという広い圧力範囲にわたって観測され、220 GPaを超えると転移温度が急激に上昇する。超伝導は、ゼロ抵抗、最高190 GPaの磁化率、最高9 Tの外部磁場下での転移温度の低下の観測によって確認され、ゼロ温度でのギンツブルグ–ランダウモデルによると上部臨界磁場は約62 Tになる。水素は軽く、量子的な性質を持つため、X線散乱法によるこの系の構造や化学量論の決定には限界があるが、ラマン分光法を用いて、金属化前の化学的変化や構造変化を調べることができた。今回の三元系に化学的調整を取り入れることによって、より低圧で室温超伝導の性質を維持できるようになる可能性がある。

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